くまげきリポート

くまげきリポートとは?
舞台芸術鑑賞
体験活動
子育て支援
講演会・講座
各所属団体の活動
といった、子ども劇場活動などに寄せられた感想や現地リポートを、プログ形式でお伝えします!
rss
2008年1月29日
カテゴリ: ニュースレター

子どもと文化 (ニュースレターより 岩井宏司さん)

熊本県子ども劇場連絡会では年に3回ニュースレターを発行しています。
その中で「子どもと文化」というタイトルでコラムを様々な分野の方に書いていただいています。

今回は、子どもたちの所に出かけ、ヴァイオリン、コントラバスなどを中心にクラシックからアニメソングまでいろんなジャンルの音楽を届けている熊本ミュージックアーティストの代表の岩井さんに書いていただきました。

子どもと文化

熊本ミュージックアーティスト 岩井宏司

今、世の中にはいろんな音が存在しています。道を歩けば車の音、家に帰ればテレビやゲームから流れる音、街に行けば、CDや人の歩く音など、音がない場所はこの世にはまずないでしょう。
人間はたぶん、生まれてから死ぬまでに最も使う場所が耳なのかもしれません。本日の題材は「こどもと文化」ということですが、まずこの音に関するところに目を向けて、少しお話をさせていただきたいと思います。

最近あった映画で「オールウェイズ 続三丁目の夕日」というのがありましたが、私はあの世界がとても懐かしく、そして人との繋がりの美しさ、優しさがとても好きで、上映されるとすぐ観に行きました。
私が育った場所は長崎県諫早市という所で、父の職場は徒歩3分、家の前には1面だけのテニスコートがあり、グラウンドや砂場、そしてカブトムシなどが採れるような林がすぐ近くにありました。周りには平屋の家がたくさんあって、ご近所の人はほとんど知らない人がいないと言っていいほど、人との繋がりが強い町でした。そして家族を近くに感じることが出来る町だったと思います。そんな土地で育った私の幼少時代は、本当に遊ぶのが大好きな子どもで、近所の子どもたちと一緒に、人の家の庭に地下基地を作ろうとしたり、近くの山に入っては、木の上に家を作ろうとしたり、防空壕などの洞穴を見つけては、ろうそくを持って探検に入ったり、川に行ってアメンボウとかミジンコを取って遊び、時々流れてくる蛇に驚いたり。毎日毎日なにかしら大冒険があっていました。そんな町に私は小学校6年生まで住んでいて、熊本へ引っ越して来ました。
私が子どもの時に毎日耳にしていた音は、自然の中にある音、鳥の声、虫の声、風の音、木々の音、人の触れ合う声、今思うと、それはとてもいい音の中で生活していたように思えるのです。
映画「オールウェイズ 三丁目の夕日」の時代設定とはだいぶ年代が違いますが、とても近いものを感じるのです。
今の子どもたちはいったいどんな音を耳にして生活しているのでしょうか? 道を歩けばいろんな騒音が聞こえ、遊びはゲームが主流になり、よく耳にする歌謡曲もコンピューターサウンドばかりですし、家に帰ればテレビから出てくる機械的な音。ずっとそんな音の中で生活をしていると、知らず知らずのうちにストレスを感じ、攻撃的な精神状態になったり、せっかちになったりするように思えるのです。
最近のいじめや家庭の問題、また犯罪の件数も昔に比べれば増加していますが、社会全体がイライラしてしまっている気がします。私はその原因の一つに、この日常に入って来る音に原因があるように思えるのです。そんな世の中で、いったい私は何が出来るのか?どんな貢献ができるのか?時々考えます。

熊本ミュージックアーティストという団体を作って6年になります。今まではクラシックの楽器を、より身近に感じていただき、町のあちこちに音楽が溢れ、みんなが楽しい気持ちになれるようにと願い活動を行ってきました。本当にいろんな曲を、いろんな場所で演奏をしてきました。印象深い本番もたくさんあるのですが、その中の1つにホスピスでの演奏というのがあります。コンサートを聞いて、最も短い方で一週間以内に亡くなられた方もいらっしゃいました。その方から、「こういう音楽に最後に触れられて、本当に幸せでした。安らぎました。」と声をいただきました。また結婚式での演奏では、「本当に一生心に残る時間を過ごすことができました。」と言葉をかけられ、またコンサート終了後などには、小さい子どもたちに絵と手紙を贈ってもらったりすることも増えました。
演奏者は普通の人よりほんの少しだけ楽器が弾ける特技があるだけで、決して特別な存在ではありません。そんな存在の私に、音を聞いてくれた数々の人が優しい言葉かけてくれます。その言葉と気持ちは本当に感動的で、いつも心にグッときます。コンサート中にそのオーラを客席から感じることもよくあります。私はその皆さんの優しい想いを音にして、これからも子どもたちに贈りたいと思っています。技術的にも、それを音にすることは本当に難しいのですが、一音一音を大切に、心を込めて演奏をし、皆さんからもらったエネルギーを、また多くの方にお届けしていくつもりです。この騒音の多い世の中で、ほんの一瞬の時間芸術ですが、その時に身をおいた子どもたちに、なにかを感じてもらえれば、本当に幸せです。

最後に一つ皆さんにお願いがあります。コンサートが終わった後のことなんですが、ぜひ家族でいろんな話をしてほしいのです。私も子どもの頃、子ども劇場に入っていて、公演が終わると、父や母や妹とリンガーハットなどによって、外食をして帰った記憶があります。その公演の内容は申し訳ないのですが、全く覚えていないのですが、その時は家族全員、本当に優しい、幸せな空気だったと思います。その時間が好きで、きっと私は今の職業についたのだと思いますし、音楽が好きになったのだと思います。子どもたちの手をとり、できる限り優しい言葉で、コンサートの話などをして頂ければ、きっとなにかが変わる、そんな気がします。
音楽とは時間芸術です。私もいつまで演奏できるかわかりません。でも私の演奏を聞き、きっと子どもたちの中から新しい音楽家が生まれてくるでしょう。勝ち負けではなく、優しい音を奏でてくれる子どもたち。そしてそれを優しく聞ける子どもたち。そしてその子どもたちが大人になって、子どもを生み、その子の手を握り音楽を聴く。そんな時間の流れが出来ていったら、きっといい世の中が来る。そう信じています。
戦争のない、みんなが優しい気持ちをもてる社会を、心から願います。

岩井さんも子ども劇場に入ってらしたのですね。
これからも子ども劇場では地域公演などを通して、もっと多くの子どもたちに岩井さんたちの素晴らしい弦楽の音色を届けていきたいと思っています。

投稿者 冨士川 佳余子 @ 23:30 | コメントはまだありません
↑ページの先頭へ